2012年6月28日木曜日

「もう卵は殺さない」香魚子(その1)



マーガレット コミックス 集英社



















タイトルだけを読むと何だかよくわかりませんが、
クリエイティブなお仕事をされている方であれば、何となくわかるような気がします。

この読み切りは、4つの作品から出来ています。収録は以下の通り

  1. 「きょうは何の日」週間ジャンプ 平成24年4月20日増刊 アオハル"bitter"
  2. 「茉莉花にくちなし」別冊マーガレット  平成23年11月増刊  別冊マーガレット "sister"
  3. 「亘理くんとふれたなら」 別冊マーガレット  平成24年1月増刊  別冊マーガレット "sister"
  4. 「もう卵は殺さない」 別冊マーガレット  平成24年6月増刊号  bianca
「きょうは何の日」は12ページですが、
他の3作品は40ページから60ページという読み応えのあるページ数で、
読み切りだからと侮ることなかれです。

★きょうは何の日

主人公の女子はクラスではちょっと浮いた感じ、
彼女には別のクラスにちょっと気になる男子、遠藤君がいる。

彼女は、少しツンデレ?っぽいところもあり、素直になれなかったりするので、
遠藤君に冷たくされたりする。


ホワイトデイの日、遠藤君に今日は何の日が聞いてみるんですが、
まったく動じない遠藤君、


結局、自分から、「お返しちょうだい」などといってみちゃったりします。


これまでそんな態度も出していないような、気にかけている男子が、
実は、お前の事、気になっていたんだよ.....的になったんですが、


しかし、遠藤君には・・・・・


でも、やっぱり、とてもうれしいですよね、

マーガレット コミックス 集英社









最後、ちょっと、えーっ、そうだったの?となる展開。

香魚子せんせの描く女の子って、
何となく、透明感があるように感じます。

とっても綺麗だったり、かわいらしかったり.....女の敵(笑)

次回は、「茉莉花にくちなし」について・・・・。


2012年6月19日火曜日

「荒野の恋」タカハシマコ 原作:桜庭一樹










すなわち、スレンダーは秀才
巨乳は天才

荒野、12歳、おとな 以前。
中学の入学式の朝、山野内荒野は急いで飛び乗った電車で、
神無月悠也に窮地を救われる。

その日、朝のホームルームには、なんと助けてくれた、神無月悠也が、
しかも、悠也と荒野は学級委員となってしまった。

この作品は「なかよし」で連載されているんですが、
普通に大人でも読めるところが凄いと思うのです。

女の子が大人になっていくって、
体の変化とか、異性を好きになるとか、家族の事とか、お友達との友情やら嫉妬やら、
いろいろ大変なんです。

そんな荒野ちゃんの何というかアンバラスになりがちな、
女の子の成長を上手く表現しています。

特に、自分ではまったくわかっていない事が多くて、
実は荒野ちゃん、お友達に嫉妬されるぐらい巨乳だったりして、

お友達のお母さんに着物を着付けてもらう際、
女の子の体は本人の了承なしに突然はじまって、終了するまで待ったなしに続くのよね、
なんて言われたり、

最近よく転ぶって思っていると、
家政婦さんの奈々子に、胸のせいだと指摘されたりして、

そして、冒頭の台詞、

やせるのはダイエットすれば、やせる、でも太ったって胸はでてこないぞ、
すなわち、スレンダーは秀才
巨乳は天才
荒野 おまえは いま 天才の道を 歩きはじめたのさ


早く大人になりたい気持ちと、何も変わりたくない、ここにいたい気持ち・・・・・












講談社 なかよし KCデラックス



わたしは、タカハシマコせんせの描く女性が凄く好きです。
とくに最近の作品はわたしのストライクゾーンなんですよね、

荒野の恋 2巻は、2012年7月6日発売ですよ。

2012年6月16日土曜日

「未完の恋」宮内由香

わたしが宮内由香せんせに出会ったのは、
2010年のつぼみvol.8、「夏の思い出」でした。
百合系の作品はそれなりに好きで、読んではいましたが、
何となくというような曖昧なもので、
つぼみもそういった流れで読むようになったのですが、
今から思えば、もっと前から読んでおけば良かったと後悔しています。
しかし、こうして、宮内由香せんせの作品が、
つぼみ収録+αという形で刊行されて本当にうれしいです。

さて、「夏の思い出」、
わたしはもう、1ぺージ目から引き込まれてしまいました。

「未完の恋」宮内由香 芳文社













結婚式会場で一人立つ綾乃、
彼女はこれから結婚式をあげる、従姉妹「しょうこ」との、
ある夏の日を思い出していた。

綾乃は内気な性格で、本を読んだりするのが大好きだけれど、
暑いし、うるさい親戚も苦手なため、夏休みが嫌いだった。
けれど、嫌いな夏も、従姉妹の「しょうこ」が来てくれれば、
もうそんなことは全然関係なかった。

畳のある部屋で、干された布団に寄りかかり、
苦手な親戚たちが綾乃を誘うが、一緒には行きたくはなかった。
シーツに包まり、やり過ごしていた綾乃のもとへ、
しょうこがやってきた。

大人たちはお墓参りに行ってきたようで、
しょうこも制服姿だったので、
綾乃は用事の済んだしょうこが帰ってしまうんじゃないかと心配だった。

しょうこは、そんな綾乃を思いやるが、自分は受験も控え、
日帰りである事を綾乃に伝える。

綾乃は受験が終われば、また来年も来るよね、
ずっとずっと来るよね、と、しょうこに問いかける。

そんな、綾乃にしょうこは......

今、目の前に、そんなしょうこが結婚式をあげている。
綾乃は、大切な人、しょうこの幸せをそっと祈る。


「未完の恋」宮内由香 芳文社


















この単行本は、百合作品だけではなく、
ファミリー向けの作品も加味されています。
宮内由香せんせいは、LO等にも掲載されていますので、
青の時代、恋愛賛歌など、
そういった要素が強い作品と思われている方は拍子抜けされるかもしれません。
けれど、内容は宮内由香そのものではないかとわたしは思っています。

描き下ろしではないもの
  • 「キャメル」つぼみvol.1(2007年発行の同人誌)
  • 「胸の炎」つぼみvol.2(2009年)
  • 「シュガー」つぼみvol.3(2009年)
  • 「鬼丸さんの恋」つぼみvol.5(2010年)
  • 「夏の思い出」つぼみvol.8(2010年)
  • 「泣き猫 月光を浴びる」同人誌(2011年)
  • 「3年前の・・・」東日本大震災チャリティ同人誌(2011年)
  • 「ファミリア・ファミリア」つぼみvol.17(2012年)
描き下ろし
  • 「未完の恋」
  • 「鬼丸さんの恋 その後」
  • 「ファミリア・ファミリア キヨコ結婚前」
  • 「ファミリア・ファミリア 5年後」
ファミリー向け
  • 「ここは帰りた荘1」
  • 「ここは帰りた荘2」
  • 「ここは帰りた荘3」
あとがき
  • ひとりごと
その他
  • 書店別特典

2012年6月13日水曜日

「明け方、露が光っている」谷川史子

露草:なつかしい関係

男という生きものはどうしてこう・・・・・、

ちっちゃい頃のカホは、夏休みの暑いのも、早起きも苦手だけれど、
水晶みたいな露を含んだきらきら光る青い花、露草を眺めるのが大好きだった。

結婚して初めての夏、カホとショウは喧嘩した。
それはもうなんというか、断然、旦那のショウちゃんが悪い!

だってショウちゃん、初めての夏休みだというのに、
遠出はしたくない、混雑は嫌だ、家でごろごろして溜まったDVDを観たい、
しまいには、カホちゃんにビール取れだの、
もうカホちゃんが怒るのも無理はない。

カホちゃんは優しいので、そんなショウちゃんのわがままも、
お仕事で疲れているから、まぁ二人でのんびりもいいかなぁ・・・・、
なんて思いはじめていた矢先、
ショウちゃんの男友達から、お誘いの電話がぁ、
ショウちゃんはカホちゃんのことも忘れ、男友達のお誘いに二つ返事で乗ってしまう。

ありますよね、男の人って、こうゆうの、ええかっこしい、男のロマンとか言ったりして(ため息)

カホちゃん、切れました。わかります。ほんと、切れて当然です。
ショウちゃん最悪です。

女の子はこうゆう事ですんごく不安になります。
出会った頃はこんなじゃなかった、
メールや電話も頻繁にあった、
会いたくて、帰りたくなくて、
とても幸せだった。









けれど、もう、あの頃みたいに大事な女の子じゃなくなってしまったのかと・・・・・

男という生きものは、バカだけれど、カホちゃんの事忘れた訳じゃない、
ショウちゃんはカホちゃんをとっても大切な存在だと思っている。
だから・・・・・

2012年6月8日金曜日

「放浪息子13巻 100話 らせんの素描」志村貴子

女子はたいてい 陰険で陰湿で
男子は 乱暴と馬鹿 ばっかり
誰も全然 すきじゃなかった.....

さおりの感情はとてもよく理解できる。
私自身大人になっても、こうした気持ちは多々あるし、
男性という生きものは基本的に乱暴にできていて、
大人になっても子供で馬鹿な人がホント多い、
もちろんそうでない男性も大勢いますが・・・・・、

さおりんは、すごく大人になっている。
二鳥君を好きになって、さおりんは変わった、
小学生の頃だったら、引きこもったりして、外界との接触を遮断していたし、
好きとか嫌いとかは別にして、二鳥君や高槻さん、
その他の人々との関係がさおりんを変えていった。

『すきじゃなかった 』 という過去形が物語るように、
これまでのことを思い出して、

-笑い-となっている。

さおりん本当に大人になったんだなぁ・・・と思うのです。

エンターブレイン BEAM COMIX 放浪息子13



















まぁ、そんなさおりんの思い出し笑いを教室の男子に見られて、
ガターンッて立ち上がるところは、
さおりんのままなんですけれどね(笑)

しかし、らせんの素描ってタイトルは何を意味するんだろうって思うんです。
らせんは何かしらの比喩、メタファーだと思うのですが、
数学的には、三次元の曲線ですが、
巻貝のようなイメージであれば収束または発散するので、
多分らせんとはこちらのイメージではないかと・・・・・、
素描も日本語ですが、デッサンとかに変えてみたとしても、
フランス的なとらえ方と、ドイツ的なとらえ方があるようで、
こういった文学的な解釈はわたしには難しくて、よくわかりません。
文学に詳しい方の解説が欲しいところです。

あと、二宮文弥、
まさかこれが思し召しだなんておしゃいませんよう
お前の運命の相手はあれではなくこれなのだ などと
どうかおっしゃいませんよう・・・・・




2012年6月4日月曜日

「花無垢」紺野キタ

「花無垢」はCocohana2012年7月号のふろく「花図鑑」に収録された読み切りの短編です。
このふろくは6人の作家さんがそれぞれ「花」をテーマに書き上げたようで、
以下のような構成になっています。

  1. 『明け方、露が光っている 』  谷川史子  露草:なつかしい関係
  2. 『 菫子 』  岩館真里子 三色すみれ:わたしを想って下さい
  3. 『 花無垢 』  紺野キタ  夏椿:愛らしさ、はかなさ
  4. 『 ハイビスカスの庭』 かねもりあやみ ハイビスカス:上品な美しさ
  5. 『 まるで薔薇のようなアタシ』 松苗あけみ 薔薇:愛情、情熱
  6. 『Daydreaming』 くらもちふさこ 蓮:やさしさ
散りくる白い夏椿、花のいのちは短くて・・・・・

結婚する事が決まり、夫となるクニヒコと実家に帰ってきた。
そこには年の離れた妹のひかるがいた。
ひかるは中学生で、クニヒコには初めて会う。
そんなひかるが足を水で流している。
聞けば、新しい靴で靴擦れをしたため、冷やしているという。
靴は庭に放り投げたようで、
姉は、今夜雨が降るから、取ってきておきなさいと、ひかるを諭す。

ひかるは靴を投げた方向に探しにいく、行った先には、散りくる白い夏椿、
その枝ぶりの中に身を置き、こちらを振り返るひかる。
姉はそこに得体のしれない生き物を見る。














「この生きものは何だろう?」
「今、目の前にいる、これは何ものだ?」

しばらくして、ひかるは友達とディズニーランドに行くことになり、
帰りに姉夫婦の家に遊びにいく、
ひかるに会うのは結婚式以来だ、




















久しぶりに会った妹は、魔法がとけてしまったように、
普通の女性になっていた。

ベトナムとフランス合作の映画に「青いパパイヤの香り」という作品があります。
この映画の前半、ムイという役で、10歳の女の子が登場するのですが、
花無垢を読むとなんとなくこの子を思い出します。

きっとどんな女の子にもある”少女”という愛らしくはかない時間・・・・・

2012年6月2日土曜日

「忘れられない」谷川史子(その4)

(5)春の前日
この物語はコーラス(平成23年4月)の特大号ふろく、
「乙女こーらす」に掲載された読みきりの短編です。

単行本のタイトルは「わすれられない」なんですが、
この作品は「わすれていた」という感じにもとれる作品です(笑)

何となくこの男子好きだなぁ・・・って、事あると思うんです。
なんというか、自分のツボにはまるような、
だからといって、お付き合いしたいとか、恋人同士でイチャイチャしたいとか、
そんな事にはならなくて、高校を卒業しちゃう・・・・・

春日美鳥(みどり)は高校時代の同級生、山田君の結婚式に参加する。
山田君は、梅と桜の違いもわからないけれど、目がかわいい男の子、
結婚式が終わって、自宅に帰り、
高校時代の山田君とのやり取りを思い出して、美鳥はほのぼのとしていた。
多少お酒も入っていた事もあると思うけれど、
美鳥は自分の気持ちに(今頃になってやっと)気づく・・・・・

ホント、とってもいい感じの短編で、最後ジワってきます。

けれど、美鳥さんってどんだけ鈍いのか、
高校から10年後という設定なので、27歳ですよ・・・・・

ふと、自分自身を振り返るのでした.....orz


2012年6月1日金曜日

「忘れられない」谷川史子(その3)

(4)エンドレスマーチ
飛び込んでみてごらん、素晴らしい日々が、待っているから・・・・・

杏(あんず)は、ある事をきっかけに、人と関わることが苦手になった。
そのきっかけを作った祖父が亡くなった。

祖父は生前遺言を残していて、
杏への遺言は、「おじいちゃんとの思い出のアレ」と、だけ書かれていた。
思い出のアレ....で思い出すのは、ブリキのお人形の事だか、
そのブリキのお人形は、なぜか、
家族も知らない、古澤十也(とうや)という人物へ渡してくれというものだった。










集英社 マーガレットコミックス


そんな最中に、古澤十也本人がやって来る。

古澤はアンティーク雑貨のお店を開いていて、
ブリキのお人形は遺言により、古澤に引き取られていった。

ブリキのお人形は杏が小学生の頃、祖父がクリスマスプレゼントとして贈ったものだが、
杏はつい、かわいくないから、いらないと言ってしまう。
遠方から来たであろう、祖父の帽子やコートには雪が積もっていた。

ブリキのお人形が気になる杏は、アンティーク雑貨店まで足を運び、
古澤にブリキのお人形を売ってくれないか?と懇願する。

生前祖父は、古澤に、ブリキのお人形を売り物としてではなく、
古澤自身が持っていて欲しい、とお願いをする。
古澤はその約束を杏に告げ、絶対に売り物することはしないと約束する。

杏はあのクリスマス以来、何となく祖父の家に行こうとはしなかった、
そんな祖父が懇意にしていた古澤、杏は生前の祖父の話を聞きたくて、
アンティーク雑貨店に足を運ぶようになる。
そこには、杏の心に今もある、ある気持ちが、杏をそうさせていた。

古澤はそんな杏の心をずばりと当ててしまう。
そして、杏は、古澤に自分の心の内を話し始める。









集英社 マーガレットコミックス


人と関わることが苦手な杏、その原因を作ったと思っている祖父
この二人はとてもよく似た 二 人で、お互いがお互いを気遣い、逆にギクシャクしてしまい、
その事で人と関わることが苦手になってしまった杏、
そんな杏の心を優しく解きほぐす古澤、
結末、ブリキのお人形の秘密が分かり、杏は祖父の思いを知る。
そして、なぜ祖父がブリキのお人形を古澤に託したのか、本当の意味を知る。

私も人と関わるのが苦手で、
どちらかといえば一人でいる方が多い人間ですが、
この作品を読んでいて、涙が出てきちゃったんです。

亡くなった家族の事をどこかで想っていたんですね、
長生きすると勝手に思っていたので、
どこかでそんな面影がかぶったのかもしれません。

そういえば、作中にヨハン・シュトラウス・Ⅰ世のラデツキー行進曲(マーチ)が出てきます。
↓こんな曲です(よかったらどうぞ)